損保破綻時の保護
損害保険会社が経営破綻したときの契約者保護のために、損害保険契約者保護機構がある。4月1日、機構が破綻時に保護する割合が変更された。
これまで、損害保険会社が破綻すると、自動車保険を契約してい場合は、保険金額は90%の保護だった。
これはどういうことかというと、自動車保険を契約していた保険会社が経営破綻したあと、自動車事故を起こして相手を死亡させ、対人賠償保険から支払われる保険金の額が1億円というような場合、9000万円しか支払われないということである。つまり、1000万円は自己負担することになる。
損害保険ならではの補償である賠償保険で、保険金が削減されるということは、減額された金額分を加害者側が自費で負担する資力がなければ、被害者が救済されないということになる。
これが、4月1日以降に損害保険会社が破綻した場合は、破綻から3か月以内に起きた事故であれば、保護割合は100%だが、3か月経ってから起きた事故に対しては80%になる。
健康状態に問題があれば新規加入が難しい生命保険と違い、自動車保険などの損害保険は、経営破綻した保険会社の契約を解約し、新規加入するすることのデメリットはほとんどない。
破綻後3か月たったあとの事故の場合は、80%保護にするというのも、破綻した会社での契約を解約し、健全な保険会社での速やかな契約を、契約者に促すためのものだろう。
今回の保護割合の変更は、損害保険の性質を考慮し、実態に合わせたものとして評価できる。
ただ、変わらなかったは、損害保険の保護割合は、保険の種類によって決まりまること。「別に問題ないじゃないか」と思われそうだが、補償内容は同じであっても、「保険」と「特約」として保険についているのでは、保護割合が変わるケースもある。
たとえば、「個人賠償責任保険」は、破綻後3か月以内の事故であれば100%保護となるが、3か月経つと80%の保護となる。
ところが、同じ補償内容であっても、「賠償責任危険担保特約」は、主契約の傷害保険が90%保護であるため、それについている特約も90%保護となるのだ。
スノーボードをしていて、他人にぶつかって相手にケガをさせ、3000万円損害賠償しなければならいというケースでは、「個人賠償責任保険」なら、事故が保険会社破綻後3か月以内に起きたものであれば、3000万円支払われるが、同じ会社で「普通傷害保険」に「賠償責任危険担保特約」をつけて契約していた場合は、「賠償責任危険担保特約」から損害保険金は2700万円しか払われず、300万円は自己負担となる。
同じ補償内容なのに保護割合が違うというのは、何だか割り切れない思いがある。ただし、東京海上日動の「超保険」だけは、補償内容ごとに保護割合が決まるのである。こうなると、ますます割り切れない思いが残る。
破綻時の保護割合は、主契約の保険種類ごとでなく、補償内容ごとに決めるべきではないかと思う。
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